終わりの始まり   (ファンタジー小説 世界 1)

「クルア、キミができないのなら私が自らを…」その最後の言葉がボクの中に、ただ渦巻いていた。諭すように、試すように、そして騙すように。昨日からのできごと。別れと始まり。始まりの出会いと、唐突な別れ。ボクはその渦巻くばかりの言葉を吐いていたはずのものを、ようやく掴み上げた。そして、聞いたばかりの綻びより漏れ出す力で中身だけを重くしたあと、内側だけ高めた渾身の力で牢屋の壁に叩きつけた。あらゆるマドの力を...

 08, 2015   0
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世界の真実  (ファンタジー小説 世界 2)

昨日の朝、その朝までは変わらないはずだった。おぼろげな遠い記憶の中では、五六歳の頃は父さんと色々な国の色々な場所に行ったことがあったみたいだけど、気が付けば父さんと二人この辺境にあたる村で、花を届ける仕事を繰り返していた。村長さんの家や他の人の家、祭りの時の村の集会場など、季節ごとに色々な花をそれぞれ届ける。年に二度だけ村のはずれの聖宮まで届ける仕事があり、昨日はそれを届けて終わりのはずだったなの...

 09, 2015   0
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蘇る記憶 (ファンタジー小説 世界 3)

「アブソンスが亡くなったのは本当だ。辺境のチアルで久しぶりに隠蔽の光が灯り消えた。ちなみにその時対峙するかのように大きな光が二つ。それに異様に点滅する幾重にも重なった光が一つ。点滅する光は隠蔽の輝きが消えるとともに輝きを失ったがな、それがお前さんだ」モンドと名乗った男の言葉は、意味深い謎かけのように聞こえた。「…十年以上前突如王国の歴史に現れた姿なき暗殺者を、我々王国マド師団は最初、複数の一味だと...

 10, 2015   0
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祝福 (ファンタジー小説 世界 4)

「情けないことに我らマド師団が突き止めたことと言えば、その幼子の名前と一緒に暮らしているとゆう父親の名前だけだった。そして虚しい尋問を繰り返すだけの日々は、唐突に終わりを告げた。難攻不落打出不能と言われた、この王国辺境にある特別収容所からの脱獄と管理者全員の死亡とゆう汚点を残して」忌々しそうでもありそれを喜ぶようでもあった表情の男は話をつづける。「その責任の一端を支払うために、幾つものマドを持つオ...

 15, 2015   0
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最後の言葉 (ファンタジー小説 世界 5)

「『忌々しい奴め、せっかく手駒のマドであるアブソンスとホコロビを使い、全知全明の祝福を我が物にしようと画策をしたのにな、まあ良い他にもやることは多い。片割れのホコロビも手中にある…。残りを始末すれば何れその力もその他の力全てをも我が手に…今日のところは挨拶がわりだ…また…』私を見るなりそう吐き捨てた<百目>と名乗る人物は、それだけを言い残し去っていったのだ」「私の持つ祝福の更なる力を奴は知らなかったの...

 16, 2015   0
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物言わぬ骸 (ファンタジー小説 世界 6)

「君のいた世界、そして世界の本当の姿。戻りたくはないかね、知りたくはないかね。真実を」そう言ったあと男は、何処に隠し持っていたのだろうか短いナイフのようなもので自らの胸を差し貫いた。その突然な行動に驚いたボクは、思わず駆け寄りその深々と刺さったナイフに手をかける。「…思ったより苦しいものだな…できればぬいてくれないか…そうすれば…」言われた通りにボクはそれを引き抜いた。大量の血が吹き出ることとなったが...

 17, 2015   0
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世界へ飛び出して (ファンタジー小説 世界 7)

「このことは、君が考えているようなマドのもたらすものでなく、ホコロビとしてのものだ。ホロビ…スクイ…どう呼んでも良いのだが、それらがかつて持っていた力を再び摘み取る事に付随するもの、オマケのようなものだな」「…そう、今考えたとおりこのことはいつでも答えが出せる。私は君でもあるのだから」「そうそう、此処からの脱出の話だ。昔、君が此処から出るのに使っていたであろう君のマドや祝福は、未だアブソルの影響を受...

 18, 2015   2
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聖主の不満 (ファンタジー小説 世界 8)

白を基調とした聖宮本殿の自室で、ペリッシュは微睡みの世界から現実へと舞い戻ってきた。その華奢な肢体を起こすことなく小さな顔には似合わない大きめの瞳を閉じたままいつものように室内を感知する。視線とマドによる監視がないことを自らのマドによって確かめ、それが朝の決め事のように己が瞳に怪しく異力を通す。起き上がり開かれたその瞳には、その力を示す赤き光が本来の色を隠すように宿っていた。声を出すことなく意識を...

 19, 2015   0
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愚者の戯言 (ファンタジー小説 世界 9)

「何故だ?余の国でありながら、余に従わぬ輩がいるのは!誰か?誰でも良い!応えてみよ!」またもや始まった聞くに堪えない愚問に、ブラブルアは嘆息を漏らすしかなかった。もっとも最古参の重鎮であり大将軍の地位にある老獪とも言える彼は、そんな様子はおくびにも出さず目を閉じ腕を組んだまま静かに聞くばかりであったのだが。大恩ある先代の賢王より託された事ではあったが余りにも愚弄なその息子の言葉に異を唱えることさえ...

 20, 2015   0
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聖主の企み (ファンタジー小説 世界 10)

日も昇り、睡眠以外は唯一とも思える食事時でさえ聖主としてのペリッシュには休める時間がなかった。最もこの聖なる白に塗り固められた聖宮本殿から出ることなど許されない彼女には、時を知るものなど本殿の大鐘の音だけだったのだが。聖なる物に仕える者らしく質素な食事が運び込まれ食事をとるペリッシュに、お付きの信徒が午後からの予定を告げる。「再び、王国よりの使いが来ましたが如何いたしましょうか?」「その件に関して...

 24, 2015   0
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悩める武人 (ファンタジー小説 世界 11)

聖宮本殿のとある一室で朝から待たされているブラブリアは、後悔の念に苛まれていた。引退も潮時の頃と考えていた彼が、先日の王宮での軍議の折、愚王の戯言に乗ってしまったとは言え義務を放棄し形的に大将軍の地位を退くことに至ったことを。恒久とは言い難いがこの平和な時世に自らのような武人は用もなく、下に閊える者が待つ身とあらばそれすらも良い機会だと思ってしまった事を。それだけでは留まらず、歳月を費やすたびに愚...

 25, 2015   0
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聖女の告白 (ファンタジー小説 世界 12)

「失礼します。大変お待たせいたしました閣下」悩みの迷宮に囚われていたブラブリアを救い出したのは、うら若き優しい声であった。「…聖女どの?」扉より現れた姿にブラブリアは思わず声を漏らした。「聖宮教の聖主を務めております、ペリッシュと申します。初めまして大将軍閣下、聖主でも聖女でもお好きに呼んで下されば良いですけど、できましたらペリッシュとお呼び下さいませ」まだ少女ではないか…ブラブリアは思った。王国に...

 27, 2015   2
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変わらぬ世界 (ファンタジー小説 世界 13)

気が付くと変わらぬ世界が広がっていた。何処までも続く青とそれに織り成す白。それはほんの数日前と変わらぬ空だった。そして、父さんが死んだことも牢に囚われたこともその後のことも、夢のような別の世界ではなかったのかと、僕はふと思った。「残念ながら幾つもの別の世界へとつながるそのホコロビの力も、別の世界に行けるわけではなく、それは同じ世界なのだよ」「なんだよモンド、起きてたなら起こしてくれれば良かったのに...

 28, 2015   0
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気がついた事 (ファンタジー小説 世界 14)

「ところでモンド。一体ここは何処で、どうやってきたんだい?」暫しの沈黙のあとモンドが答えた。「…あっすまない。考えごとをしていたのでね。その答えは今は自分の中にある記憶を探せばいいとおもうのだが」「ああそうか。自分でやったことなら思い出せるってわけか」僕は記憶を探ってみる。「そのう…、”侵食”とか云う力を振るって此処まできたのはわかったけど、此処は何処なんだ?モンドって”全知全明”いや゛全知全能”なんだ...

 29, 2015   0
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聖女の邪力 (ファンタジー小説 世界 15)

腕を伸ばすがごとく肉体を絡めとりその制御を終えたのち更なる隷属をもとめ伸ばされた”支配”の力は、精神をも服従させるため掴んだ心に深々と差し込まれブラブリアを犯してゆく。そしてその圧倒的で一方的な陵辱は唐突に終わった。「さあてね、どうしたもんかな…」己の真の力を用いて目の前のかつての歴戦の戦士を難なく支配下においた少女は、そう呟いた。「色々と聞きてえことはあるけど、先ずは腹ごしらえからかな、いつものあ...

 07, 2015   0
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取り戻された力 (ファンタジー小説 世界 16)

「主…いや、聖母殿、貴女は危険な存在だ」見た目は何も変わらない少女ではあったが、ラブラリアは目の前の存在が、恐れ敬う存在でなくなった事を感じた。「ん?剣が欲しいのか?武人とは不便なもんだな。おーい将軍の剣をもってこい!」部屋の外であたふあたとした気配が浮かぶ。暫しの時が経ち扉が開けられ、無骨な大剣が武器など無縁にしか見えない可憐にさえみえる少女に手渡された。「重ってえ武器だな、あの力があったならこ...

 08, 2015   0
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支配の力 (ファンタジー小説 世界 17)

「ん?どうした?大将軍さま。遠慮なんかするなよ」「こりゃあ遠慮じゃねえだろう。身体の支配がまだ効いてるからじゃねえか?」「言われてみれば忘れていたぜ、忘れっぽいのが俺のだめなとこだな」「ああ、そうとも我ながら情けねえぜ」「これな…」同じ顔同じ姿の二人が向かい合って喋っている間、微動だにしなかったブラブリアだったが、身体の拘束が解けるのを感じた途端、迷うことなく片方の少女の首を撥ね、返す刀でもう片方...

 13, 2015   0
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英雄の敗北 (ファンタジー小説 世界 18)

「英雄と呼ばれた貴方様にしては、諦めがよろしいのですね」穏やかな慈悲を伴う微笑みで少女が問いかける。「レトア様、先代の賢王さまが昔、まだ血気盛んな若造に過ぎなかった某によく申されました。如何なる戦でも味方を勝利に導くのが英雄の証であると、武で勝てぬなら戦わず、負けて滅ぶことがないように務めることこそが英雄と云うものだと」目を閉じ考えぶかげに答えるブラブリア。「随分と弱気なことなのですね」少女が返す...

 14, 2015   0
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祝福 (ファンタジー小説 世界 19)

食事を終えた二人の間には、妨げるものなどなくブラブリアは見据えられたまま身動きさえできなかった。「我らは悠久の時より世界を導きしもの、そなたの疑い憂いをはらすよう、わたくしがこの国の支配者たることを証明します」ペリッシュの言葉と共に室内に圧倒的な威圧が満ちた。その耐え難い重みと湧き上がる恐れに頭を下げたブラブリアにペリッシュは言葉を続ける。「長き時の間に力を失いし下僕の末裔よ、この真の支配者たるわ...

 15, 2015   0
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出立 (ファンタジー小説 世界 20)

正宮本殿の扉の前で二人は、歩みを止められることとなった。「ブラブリアどの如何なつもりですか?」本殿の扉を塞ぐ形で二人を取り囲んだ者たちが問いかける。彼らの顔には荒事も辞さぬような決意が浮かんでいた。それでも言葉だけで引きとめようとするあたりは、英雄の武の成せるものなのか聖主の身を案じてのことなのか。「あの愚か者は後先など考えておらぬ様子。ここはわたくしの言葉にて思いとどまるように申し渡すつもりです...

 18, 2015   0
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