魔窟 エリア5 最深部  三日目

「おい!ウー、あの木偶人形をなんとかしろ」次々と襲いくるゴブルを切り捨てながら、俺は叫ぶ。「あい、わかったあ」脇を固めていた、はぐれ蛮族であるウーの即答に嫌な予感が浮かびあがった。案の定、鈍い打撃音のあとに辺りが輝き、その場の緊張感すらかき消すような間抜け声があがった。『たいさ~ん』そして俺は今日も、エリア5最深部より連れ戻されることになった。「みんなお帰りい、今日も全員無事だね」脳天気な声をだし...

 01, 2014   0

魔窟広場 募集の間  ひと月前 1

俺はランスロット、此処グレイトバースト魔窟でも有名な剣士だ。見殺し…いや、皆殺しのランスと異名を騙る俺は、広大な魔窟のエリア20まで看破している。その俺がよりにもよって、間抜けどもと組んでいるのは、この異名のせいでもあったのだが…。「おい、あれはランスの奴だぜ」「ああ、あの見殺しのランスか」目を閉じたまま俺は聞き流す。煩いだけの初心者の雀どもには用などない。ここ、魔窟広場の募集の間で長いこと座ってい...

 01, 2014   0

魔窟広場 募集の間  ひと月前 2

あまりにも長いあいだ待ち続けていた俺は立ち上がる。話しだけでも聞こうと思ったからだ。あまりにも有名な風貌と異名は、俺をこの募集の間の展示物と化す可能性が高かったからでもある。意を決して立ち上がり、大柄なそいつの前に俺は向かった。「俺は、ランスロット流離いの最凶の魔剣士だ」『…』「探索の仲間を探してるようだが、条件とか報酬を教えてもらいたい」『…』返事がない…。そいつは腕を組んだまま微動だにしなかった…...

 01, 2014   0

魔窟広場 募集の間  ひと月前 3

背を向けた方がざわつきだした。「おい見ろよ、背中の長剣。例の最凶だぞ!」「ああ、まちがいないな、あの束ねた赤髪、ランスロットだ」ざわつきが増してゆく。それを耳にして、感心したように幼女が言った。「最強の剣士どのは、なかなか有名なのじゃな、これでチームも安泰じゃ」「なんだあいつ、今度は幼女か。あんな小さな子まで毒牙にかけるつもりか?」「なんだなんだ、なんの騒ぎだ?」「最凶だよ、最凶。最凶が幼女までも...

 01, 2014   3

魔窟広場 登録所

先にたって歩き出した少女の後を歩く格好で俺は通路をいくつも巡る。背後ではあの馴染めない声がとんちんかんな挨拶を交わし続けているようだ。なるべくそいつを気にしないように努めながらついてゆくと、たどり着いたのは馴染みの登録所であった。「新しいチームメンバーを登録ですじゃ」とことこと駆け出した少女が、受付のカウンターに精一杯背伸びして告げる。どうやら頭さえ上に出ないらしく気づかれてないようだった。後ろか...

 05, 2014   2

魔窟 エリア5 最深部  三日目 そのあと

埃まみれの装備を部屋に放り込んだあと、浴場に足を向ける。半端な時間なのか、流れる水に身を任してるものは余りいなかった。水をかぶり思いを巡らす。いくら考えても何度も練り直しても、次のエリアに佇む俺のイメージは浮かばない。「手駒だよな…」思わず口をついた言葉は、閑散とした浴場にやけに響くばかりだった。頭以外の身体ばかり冷やし、諦め加減でググの部屋にと向かう。明日は探索はやめてみようなどと、申し出を考え...

 07, 2014   0

魔窟 エリア5 最深部  三日目 そのあと 2

声の主は随分若い男だった。見てくれは地味で、まあ、そんなことは俺には関係ない。そんなことよりも、見れば見るほどいい女だ。好みから言えば発育がこれからとゆうことぐらいだ。引き締まった身体、鋭く光る瞳、これで、胸が…。是非にお近づきになりたいものだ。取り敢えず俺は、話しかけることにした。「お嬢さん、見たところ戦士のようだけど…」「あなたもググのお知り合いですか?」若造が話しかけてきやがった。間の悪い奴だ...

 10, 2014   2

魔窟 エリア5 最深部  三日目 そのあと 3

扉が開いた。「ああっ、ベイルなのだ!久しぶりじゃの」戻ってきたググの奴が、若造をみるなり叫んだ。『ベイル様 久しぶりであります』「やあ、姫、グレム、お邪魔してたよ。やっと旅を始めることにしたから約束を果たしに来たんだ」「そうじゃ、グレムの仲間を紹介するのじゃ、うちのチームのエース、魔法剣士のランスロットじゃ。このグレイトバースト魔窟でうちのチームをあれよあれよと云う間にエリア5まで導いてくれた御仁...

 10, 2014   0

魔窟 エリア5 最深部  三日目 そのあと 4

このあとググの奴に魔窟探査の休息を宣言し、俺は部屋に戻ることにした。ググの奴とは違って寝床一つのありふれた部屋に。疲れているはずなのに目が冴えて眠れやしない。ごろごろと天井を見上げながら、魔窟探索の行き止まりに俺が悩んでいると、扉を叩く音がする。「ランスロットさん、お邪魔してもいいですか」「鍵なんかかかっちゃいねえよ」俺は寝転がったまま天井を見つめ返事を返す。「失礼します、…あっすいませんお休みだ...

 11, 2014   0

魔窟 エリア5 最深部  三日目 そのあと 5

誰もが知っているように魔石とは文字通り、魔獣が身体に一つは持っている石のことだ。俺でさえも一度見かけただけの眠れる畏敬の魔獣ドラグーも、其の辺の木々の枝でさざめいてる無害なフライブも、魔窟の深淵に撓み淀む異形のスタールでさえ、この小指ほどの水晶にも似た輝玉を内に宿してる。獣と魔獣を区別するこの輝玉、魔道士が呼ぶところの魔石は、かの神話が指し示すように人々に害なすものとして魔獣を忘れることなく刻み込...

 11, 2014   2

魔窟手前 平原 1

翌朝俺たちは、魔窟がある岩山の手前の草原にと繰り出した。例の女人形とベイルの他に、何故かググの奴とグレムがついてきやがった。「じゃあ、ググ頼むよ」ベイルが手にした袋をググに手渡す。ググの奴が渡された袋の中身を地に開けるのを眺めてると、それは魔石の山だった。「御身の名を借りて我は願いたり、宿りし者よ浮かびし者よ育むものよ導くものよ、我の願いを叶えたまえ…」ググの奴が詠唱を唱え始めた。賢者ともなると面...

 12, 2014   2

剣の道(邪な望みへの道程) 1

「経験豊富なランスさんなら知ってると思いますが、操術系の魔道の術式を裏返したものです。魔道で相手を意のままに動かすと云うものを、相手の動きを魔道で感知して記録し真似るそんな感じです」ベイルの答えはあっさりとしたものだったが、そんな魔道、術式など聞いたこともなかった俺は言葉が出なかった。「………剣士にとって型は基本だけどよ、何よりもその心構えも必要だ…」「と、言いますと」「いくら型を正確に真似ようと、そ...

 13, 2014   0

剣の道(邪な望みへの道程) 2

それからは暫く女人形に型や剣士としての所作を教える日々が続いた。リアのやつは俺の手本俺の言葉をよく理解し物覚えも良い。例の草原での稽古の後、汗を流し自室でくつろいでる俺に、ベイルがリアを連れてやってくる。トレースの術式についての具合や、いかにうまく剣技とゆうものを魔道になぞらえるかなどを相談するために。そんな日々を過ごしている内に、俺は腹を決めることにした。「しかしなんだな、リアの奴はどうみても人...

 13, 2014   2

剣の道(邪な望みへの道程) 3

「ベイル、ほんとにそれでいいのか?お前もリアのやつも」翌日ベイルたちをパーティに登録するためググと一緒に来ていた俺は、そう声をかけた。「えっ?ああ、職業レベルの登録の話ですね。それだったら師匠も奥義を極めていながら中級の魔法戦士ではないですか、ボクは一般的に中級魔道士なのは仕方ないですしリアも初級戦士は当然のことです。二人共素人ですからね」「そうは言ってもリアは俺がみたてたところ剣士としても中級ク...

 13, 2014   2

剣の道(邪な望みへの道程) 4

俺たちは改めて受付のカウンターに戻ることとなった。ベイルの奴の云うところ新しい魔道具の宣伝のための撮影をするために。「ベイル様ググ様、何か手伝いやお役にたてることは…」揉み手をしながら先程のオヤジが卑屈に言葉をあげる。「あ?別にいいよ、あとは勝手にやるから。それにあんた邪魔だから」冷たい眼差しそのままの答えをベイルが返す。「おいおい、いいのか?ベイル。このオヤジは魔窟の管理の長らしいぞ」俺がそれで...

 31, 2014   1

剣の道(邪な望みへの道程) 5

翌日も草原でのリア相手の鍛錬となった。リアが云うには、グレムの調整もあとわずかでそれに並行して例の魔道具の開発もしているらしい。リアに破邪流の型と幾つかの奥義の反復をやらせている間、俺は珍しく考え事をして過ごしていた。俺の流派「破邪流」は、師匠である剣王ククルカンが多くの戦いや長い修行の上で編み出したもであり、風の魔導を得意とした師匠の魔導剣の奥義が幾つかある。割と柔軟で悪く言えばガサツな師匠は、...

 05, 2015   0

剣の道(邪な望みへの道程) 6

「師匠は魔力についてどう思われますか?一般的には誰しもが持っている力、才あるものはそれを多く所持し多くの事柄を成しうる術とゆうことなんですけど…」だんだん小難しい話になってきやがった。でも、この優秀な弟子のことだから俺にもわかりやすく話をしてくれるのだろう。「ああそうだな、お前の言うとおり誰もが持っちゃあいるが、そいつはひとりひとり別モンだってことかな?威力とかよそいつの得意なこととかよ」「そうな...

 02, 2015   0

見殺しのランス 1 (邪な望みへの道程)

翌日はベイルとリアを伴って俺は、魔窟入りをしていた。「リア、右から三体、ゴブルだ斬撃!」見通しの悪い魔窟の右の分かれ道にリアが切り込んでゆく。最初のエリアと言えば小柄な人型のゴブルがほとんどだが、希に大型のオルクや群れをなして飛び回るアズバットも現れる。武器や防具を扱うオルクもそうだが、各種の状態異常をもたらすアズバットも囲まれれば意外と手ごわい。周囲を索敵し情報をもとにした戦術を支持するベイル。...

 30, 2017   0