それぞれの輝石 1

「所詮ボクには無理なんだ、英雄と呼ばれた父様のようになるには」今朝も組手の練習でアザだらけになった少年は、部屋にもどるなり倒れこんだまま泣き言をあげた。「ポル様…そんなことでは乱世の覇者にはなれませぬぞ」庭で組手の相手をしていた衛兵の一人を宿舎へと下がらせたあと、痩身の黒衣の司祭が戒めた。「別にかまやしないさ、ボクには父様の血が流れてないんだ、優しかった母様の血ばかりで」ますますいじけたように少年...

 21, 2014   0

それぞれの輝石 2

「いいからオヤジ、酒を持って来い!」薄汚れた戦士風の男が騒ぐ。「旦那、勘弁してくださいよ。いくら用心棒とはいえ、その旦那のために売り物がなくなっちまったら元も子もありませんぜ」酒場の店主が呆れ声で応えた。実に人とは都合のいいもので、店での諍いを収めるため雇った男を諍いがなくなれば厄介者にする始末。もっとも、雇った男があまりにも強すぎてここいらの街道筋でも評判になってしまったことや、用心棒代がわりの...

 22, 2014   0

伝説の魔道士と全知全能の石  無章

「これでもう天空の守護も終わりじゃ、これからは永劫に昼と夜がめぐることじゃろう」「そうじゃなソリス、世界は安定し混沌に舞い戻ることもなかろう」二人の老人が席を立ち右手の扉から消え去った。「テンポスの云うとおり、わが海原も満ち満ちて…」「…大地も変わりなく恵むと云う事だ」また二人立ち上がり左手の扉へと向かう。「マーリス様もフラメント様もゆかれてしまうのですか?」部屋の隅で立っていた若者が声を上げる。「...

 23, 2014   -

伝説の魔道士と全知全能の石  序章

かつて、光と闇は相反する世界の象徴であった。創造以来、拮抗した二つの力は譲り合うこともなく永遠の争いを続けていた。あるとき、始まりの真理について解明をなした初代闇の帝王は、創造主<輝石>を手に入れるため選りすぐった配下の者たちを世界各地へと派遣した。輝石を手中にさえすれば、均衡を崩し争いに終止符が打てると考えたのである。ただし、その後の世界は争いのかわりに、彼の支配する絶対服従の闇の世界と言うわけ...

 23, 2014   -

伝説の魔道士と全知全能の石  闇の司祭

─ 東の大陸の西方 バランナ海 ─帝国の最新型帆船黒龍号が、光の島々の南沖を航行している。季節がら、バランナ海は雲ひとつなく波も穏やかで、順調な船旅が続いていた。「司祭様、あと三日もすれば例の島が遠眼鏡で確認できますがね」船長が舵を仕切りながら、隣に佇む大司祭に目をやった。「島の名はカオスとゆう」司祭は問いには答えずつぶやいた。「はぁ、そうですかい」「我らが発祥の地、いや全ての始まりの場所だ光と闇の...

 23, 2014   -

新たなる争い 1 (小説 輝石物語)

その昔遥かなる昔、生まれて幾ばくも経たぬ大地は二つの大いなる力による争いの末に創世時のような混沌へと帰していた。流れ続ける悠久なる時は、またも気まぐれを起こし、未熟で未明なる大地を再び世界にと齎すこととなる。その幼き大地にも、人々と従順な小動物達と溢れるばかりの緑が湧き出し、恐る恐るに緩慢に蔓延を始めていた。かつて神と呼ばれた創造の七賢人は既にこの世界から去っており、一人残されていた名も無き伝説の...

 07, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 2 (小説 輝石物語)

「俺様の剣はどこだ?鎧は?それに此処は何処でいつの時代だ?答えがなきゃルナン、てめぇの首をひっこぬくぞ!!」カーロンは一気にまくし立てた。「まあ落ち着けよカル、主のカラッポの頭でもわかるように順番に説明するからの」怒れる戦士を目の前にしながら、小柄な少女は怯えることもなくしれっと応えた。「そもそも、わしの首など引き抜いても無駄な事は百も承知じゃろ?」「マイスィート・カルよ」怒りに燃えるカーロンを見...

 08, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 3 (小説 輝石物語)

ー 500年前 大陸北西部 ユグドラス高原 ー「いかん!カーロン!布陣が崩れ始めおった!」「ちっ!!またあの小僧か!?」紫の魔女の声に終わりなき狂戦士が舌打ちをした。長引く戦闘の中、押し寄せる小柄で醜いドヴェルグの群れは長い腕をかざし、手にした斧や十字鍬をやみくもに振り回しながら味方の軍列を突き崩していた。「このぉ!チビどもがあ!!」最前にいた狂戦士は、鬱陶しく立ちはだかる小柄な軍勢を一閃し踵を返す...

 08, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 4 (小説 輝石物語)

襲いかかる無数の白い影を、紫の軌跡を残しながら赤い閃光が切り払ってゆく。斬撃と怒号の中、無限とも思われた白い影は次々と大地に崩れ落ち次第にその数を減らしていった。激しい攻防の合間にゆらりと姿を現す戦士の赤い影は、心なしか肩で息をし苦しげな表情に見て取れた。「あと二、三日は持つとは思うていたのじゃが、もうそろそろ潮時かのお…」紫の魔少女のつぶやきに、不安げに若き指導者がその顔を見つめた。不意に辺りが...

 13, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 5 (小説 輝石物語)

「カル、まずは城下にでもゆこうかの」少女が傍らの農夫にそう述べた。「今更、城なんかに出向いてどうするんだルナン?」農夫の答えは気が向かないものであった。「王に謁見するのじゃよ」「でもよ、あの小僧はとっくに死んじまってるんだろ?」「ああそうとも、今は十八代目聖女王ポリテラーナが統治しておる」「おんな?女王なのか?おんなが国を治めてるのか?」「ああ、主もよく知ってる男が後ろ盾でな」それだけ答えると少女...

 13, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 5 (小説 輝石物語)

夜に包まれたこの時間鍵もかかってない扉を開けると、そこだけは表とは違う破廉恥な騒ぎに満ちていた。「なかなか、いい店じゃあねえか」酔いどれの男たちに女たちがまとわりついている。今夜の寝床でも探そうとでもゆうのか、しきりに酒を勧めおだて上げていた。「ノーマンはあそこじゃ」少女の顎が指ししめた奥の方に、店の盛況さに笑みが止まらないとばかりの笑顔の親父が忙しげに動き回ってる。テーブルの酔いつぶれた大男をつ...

 16, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 6 (小説 輝石物語)

翌朝、酒場の片隅でカーロンが早めの朝食をとっていると少女が現れた。「相変わらず早起きじゃの」隣の席に当然のように着いた少女が告げる。「不死の戦士は不眠症なのさ」珍しく機嫌が良い返事が返ってきた。「それにしても、よくも朝早くからそんなにも食べれるものじゃ」「小鳥とは胃袋のできが違うからな、戦士は食えるときに食っとかねえと」少女の言葉を戦士は気にすることもなく、骨付き肉にかぶりついた品のない姿のまま答...

 16, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 7 (小説 輝石物語)

一団が音もなく立ち去ったあと、業を煮やしていた戦士がまくし立て始めた。「何なんだ、あの連中は。この俺様を差し置いて」「まあ云うな、主はこの国では所詮新参者。しかし今一度、主がその力を示せばまた多くのものが主のことを記憶に刻むことじゃろうて、血塗られた狂戦士カーロンの名をな」「力を示してもいいのか?宮中で」「この国の女王は勝気で男勝りじゃからな、主のことを試すじゃろうて」「ちったあ楽しみになってきた...

 22, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 8 (小説 輝石物語)

一行は案内の者に手招かれ、謁見の広間にとはいる。重臣たちが立ち並ぶ間を通り一段高い壇上の前まで招かれた。「なんだ?こいつらは…」小さな失笑が脇の方から漏れ聞こえる。しかしそれは、突然鳴り響いたファンファーレによってかき消された。少女とアサシンがひれ伏す中、狂戦士ただひとりだけが先ほどの失笑の相手を睨みつけていた。「これカーロン、主も跪け」少女が戦士に囁く。「構いませぬよ、魔女様」重厚な調べが消えた...

 12, 2014   0
Category  輝石物語

新たなる争い 9 (小説 輝石物語)

高い壁に囲まれたちょっとした広場に、十数人の兵士らしき若者が集まっていた。その中にニヤついたソレルと呼ばれた男も混じっている。説明を受け手合い用の模擬刀の束からそれぞれが選び出す。退屈そうにカーロンは中でも一番小ぶりな剣を手にしていた。「始め」手合いを仕切るらしき男の声が上がる。向かいあった若者がおずおずと頭を下げる姿に、カーロンは欠伸をしながら眺めてるばかりだった。「礼をしないか」再び声が上がる...

 12, 2014   2
Category  輝石物語

伝説の魔道士と全知全能の石 7th 

─ 光の島々 本島内 静寂の森 ─奥深い森の中、古城の一室で溜め息が響く。「どうかなされましたか?道士様?」「いや何でもないのだよルナン、ただあの者はやはり7thの再来だとゆうことだけさ」「7thですか?」「そう、全ての始まりを託された七賢神の生まれ変わりがいたんだ。六番目の冥府の番人Arcがいたのさ」白装束の若い青年は、小鳥のような少女に優しく応えた。「そう、かつて冥府を守護していたアークは寡黙で控...

 01, 2015   0

伝説の魔道士と全知全能の石 古の海獣王

─ 二日後 バランナ海 海上 ─季節柄、穏かな偏南風にのって、大陸の商船DD号の航海はつづいていた。高く上った太陽が見下ろす船の一室で二人の男が内密な話を今日も続けている。「…そろそろだな」重く低い声が話を断ち切る。司祭の声に船長が問いただす。「いきなり何のことですかい?司祭様」アーク卿の低い声の変わりに、船内に張り巡らされている通話管が鳴り響いた。『船長!右舷前方に島を発見!例の奴です!』「と、ゆう...

 01, 2015   0