Category: 遷都物語  1/1

序 (小説 遷都物語)

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 万物全てにマナありて 示すとおりに流れゆく 流れを拒むイシあれば ミチは不穏に揺れ動く 幾世も全ては民ありき 想いと終わりに流れ着く 思わぬさまにと流れ着く注釈マナ  まことのな(真名)物の本質や真の姿を表す色合いや形など 通常は言葉によって示されるもの 常人には不可知の様相 ...

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青龍と蒼輝 一  (小説 遷都物語)

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 静城京 朱雀大路羅城門から朱雀門へと続く乾いた大路を一人の男が歩いている。どんな手管を使ったのであろうか、いつもは権限を笠に勿体ぶって足止めをしがちな顔調べを、その男はキリン(麒麟)とだけ名を名乗りスルリと通り抜けていた。異国風な顔立ちを僧形にそぐわない長髪で飾り落ち着きなく伺い歩くさまは、男を得体の知れない胡散くさに包むようだった。「それにしてもここは都にしては人通りも少ねえし、道幅だけ広く殺...

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青龍と蒼輝 二  (小説 遷都物語)

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 宮廷内 親王私室 二人の人物がざっくばらんに会話をしている。口調と会話の内容からは上下関係が伺えるのだが、同じ場に座り込むそれは実に奇妙な構図に見えた。もっとも他に眼などないのではあったが。明らかに高貴な生まれの人物が、よくみれば異国の顔立ちともとれる片割れの男に問いかける。ひじを付き不遜とも親しげにも取れる表情で。「なあ弥彦、先ほどの種次の意見お主ならどうみる?」「殿下、マナによれば参議どのに...

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新流譚  巻の一  (小説 遷都物語 外伝)

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薄雲を纏っただけの淫らな月が、滑らかなる山裾をねっとりと這いのぼる。一人の老人が小さく刳りぬいた明り取りからじっとその有様を見つめていた。こんな時刻に不意に訪れた無粋な客とはいえ、老人は待たせたまま背を向け長いあいだ黙り込みを続けている。無粋な訪問者は二人。 地味で質素な身なりの老人と比べ都からの使者であった二人は、狭く古ぼけた館には似合わないほど場違いな装いであった。少々、長旅の疲れで薄汚れては...

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新流譚  巻の二  (小説 遷都物語 外伝)

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その夜は長旅の疲れか、はたまた弥彦の術のせいなのか二人の来訪者は程なく眠りにと落ちていった。翌早朝、弥彦の館にもう一つの気配がふいに現れる。気配ばかりの姿なき声が弥彦に話しかける。「おかしら、姫様のお呼びでございます」「何用かの?」驚きもせず受け答えする弥彦。「来訪者の一人を連れてまいれとの仰せでございます」「では、ごめん」目の前の気配が一瞬だけ来訪者の眠る隣室に飛び、やがて消えてゆくのを弥彦は感...

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新流譚  巻の三  (小説 遷都物語 外伝)

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人麻呂にとってなかには未だ理解のできない話もあったのだが、いずれ理解するとゆう言葉にはうなづけた。弥彦の話に頷き、時折周りの景色に感嘆し馬の歩を進めてゆく。昨晩までの強行な馬上の旅とは違い、実にのんびりとしたものだった。半時も過ぎた頃何かの気配を感じ、暫く口を噤んでいた人麻呂はまたもや思ったことを尋ね事とした。「ところで弥彦どの、今朝がたから周りに現れては消える気配、そう、この気配はなんでございま...

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闇の姫と光の皇子  1  (小説 遷都物語 大陸の風編)

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「やひこは、いるか?やひこ!」静かな朝を揺るがすような大きな声が響く。ここは、陸奥の血を引く水卿の館、声の持ち主はその若き党首水弓彦のものだった。どたばたと歩き回る背丈の高い男は、党首にしては威厳が少々足りないようにも見えたのだが。「もし、わたくしめのことでしたら此処に…」歩き回る弓彦の前に不意に現れた少年が応える。「おお、居るではないか、やひこ」「やひこではなくアヒクです、ミルナ・アヒクがわたく...

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闇の姫と光の皇子  2  (小説 遷都物語 大陸の風編)

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向かった先は耶麻部皇子の館であった。重厚な門を潜り神社仏閣とも思えるほどの広大な庭をぬけたあと、中央の正殿にと通される。幾つもの部屋を通り過ぎ、奥まった一室にその館のあるじがちょこんと座っていた。「我が君におかれましては…」こうべを垂れたまま弓彦がらしくない挨拶を述べ始める。むろんアヒクもひれ伏したままだった。「もうよい弓彦、らしくない挨拶など今更じゃ、ここに控えておるのは我が忠実なる僕…だったもの...

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闇の姫と光の皇子  3  (小説 遷都物語 大陸の風編)

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「秋材なにを驚いているのじゃ」笑い声を上げ皇子は問う。「心話など、おぬしも朝飯前じゃろう」皇子の問いかけに気を取り直した老術学者は応えた。「我が君のような特別なる御仁はともかく、わたくしの心話など児戯にひとしきもの。現にこの童は術式術符の手助け無しで、かの大導師の如く、自然に心話を…」「あの死にぞこないの爺様と一緒にするな、のうアヒク、歳は幾つじゃ?」今度はアヒクに顔を向ける。「十と四つに…」「な、...

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新流譚  巻の四  (小説 遷都物語 外伝)

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「なんのつもりだ!我を赤鶏王と知っての所業か?場合によっては許さぬぞ小娘!!」声とともに天を覆いつくしていた炎が割れ、仁王立ちの人影が現れた。その姿は人麻呂と同じ顔立ちではあったが、先ほどの笑みなど微塵もなく、燃え上がるままの長い髪、頬に浮かび上がった化粧のような異様な赤き文様、全身に纏った圧倒的な圧力に更に三種三様の長い尾が巻きついた姿をしていた。一歩踏み出すごとに、あれほどの業火が恐れ退き男の...

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