Category: ベアルドナルドラ物語(ファンタジー)  1/2

放浪の戦士  再会 1

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「湿原を渡り川を越えたと思えば、また湿原か…」緩やかにうねる大河の流れの中、不自然に隆起した岩の上で一人の戦士風の男がつぶいた。大柄な身体を毛皮を編みこんだ珍しい帷子で覆い、石造りの胸当てと巨大な石の盾を背中に背負っている。どうみても戦いに不向きなその重たげな出で立ちを気にすることもなく、見るからに屈強な戦士は軽い足取りで湿原地帯に足を踏み出した。本来ならば泥濘んで足を取られるであろうその地面に、...

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放浪の戦士  再会 2

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湿原付近の耕作地を抜けると、狭い里道は平たい石を敷き詰めた街道に変わっていった。木々も増え林を切り開いて作られた街道は緩やかに高地へと向かっているようだった。ところどころの道の分かれには、低い石塔に王都や集落への道筋がの標が刻まれており、ひとけのあまりないこの辺りでさえ王国の一部だと思い知らされる。大陸にある大小の幾つもの国を渡り暮らしていた戦士は、新興王国とはいえこの国が非常に文化的に優れている...

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放浪の戦士  再会 3

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王都へと続く街道は近づくにつれその道幅をまし、街道を利用する地元の民や交易などを生業とする旅人も見かけるようになってきた。街道沿いの集落も増え、商いの小さな店や宿らしきものも立ち並び始めている。「ここいらで休んでみるのもわるくなかろう、人とは休息を必要するものだからな」周りに言い訳をするかのように戦士は一人語ったあと、街道沿いのとある宿にと潜り込んでゆく。宿はご他聞にもれず寝床となるいくつかの部屋...

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放浪の戦士  再会 4

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「なあ、ベアード」黙り込み酔いつぶれていたかと思われた男が声を上げた。「ん?」ベアードはエールを流し込む手を止め、男の問いかけに耳を傾けることにした。「同じ戦士、同じ仲間として悪いことは言わねえ、今すぐこの国から離れたほうがいい…」「それはなぜだ?」起き上がりこちらを真剣な目つきで見つめる男を、ベアードも見つめ返す。「この国ではもう、戦士は低霊よりも邪険にされている…」シャンダルはベアードに向かい静...

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放浪の戦士  再会 5

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翌日宿をあとにし王都にと入ると、街道を行き交う民たちの好奇の目はさらに増え、あきらかな侮蔑の眼差しをするものまで現れた。「そんなに俺は珍妙なのか?」相変わらずの独り言に、そんなことはないとばかりに足元が僅かに点滅する。「だよな」その答えらしきものに一人頷きながらベアードは歩を進めてゆく。「なんだありゃ」街道を歩く民の中には、明らかな声を上げるものまで居た。ベアードはその声を聞いた後、不意に立ち止ま...

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放浪の戦士  再会 6

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目当ての建物は容易に見つかった。街道はその先の堅固な城門の前で終わっており、その目の前の脇の奥まった建物の前は人が溢れていたからだ。王宮への出入りの検問も兼ねているのだろうか、様々な都の民に混じって異国風の商人たちや旅人も並んでいる。しばらくの間待つことになるかもしれないと思いつつもベアードは、大人しく行列の最後尾にとつくことにした。列をなす者たちより背の高いベアードが覗き見るには、五人ひと組で列...

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放浪の戦士  再会 7

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「いたぞ!大柄な戦士」「こいつに違いない」「囲め囲め!」口々に叫んでは取り囲む男たち、よく見れば皆、手に武器を持つ衛兵らしき者たちだった。「俺は何も騒ぎを起こすつもりはない」ベアードは驚く様子もなくそう答えた。「すぐさまその男を自由にしろ」一人の兵が叫ぶ。「ああいいだろう、聞きたいことがあったから少し立ち止まらせただけだからな」ベアードが足元に目配せをすると、男は自由をとりもどした。「あ、ありがと...

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放浪の戦士  再会 8

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城門の中は広い庭への入口だった。奥まった先に幾つかの建物が垣間見えるその庭を一行は歩いてゆく。中央のひときわ威圧的な建物の前で先頭の兵が立ち止まった。「ここが王宮か?」ベアードが尋ねる。「そうだ、この中で王が待たれている筈だ」先頭の兵が心なしかそわそわと答えた。「護衛は良いのか?この俺は、王に危害を加えたり逃げ出すかも知れないぞ?」「我らが王に会えばわかる。王の恐ろしい力でそんなことなどできぬこと...

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放浪の戦士  再会 9

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先回りをし灯される明かりを案内に、幾つもの角を曲がり幾つもの階をベアードは進んでゆく。建物の奥深く最も高い場所にある扉の前でおもむろに灯火は消えた。「この中か…」呟いたベアードの前で扉が音もなく開いてゆく。更に薄暗い部屋の中に入ると、人影らしきものが振り向き言葉をかけてくる。「やあ、久しぶりだねベアード、いやベアルドナルドラ精霊王と呼んだほうがいいかな?」「ベアードでかまわん…貴様がこの国の統治者か...

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放浪の戦士  再会 10(完結)

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まさにデュアル王が操心の魔導を発動しようとした時、ベアードの背後のあたりから幾筋もの光の粒が王の足元にと散らばった。「うおおぅ!これは!」「これは一体?」不意に立ち上る業火にデュアル王が怯む。何故かはわからなかったが百戦錬磨のベアードがこの隙を見逃すはずもなく、呪縛が緩んだ配下の精霊たちに命ずる。すぐさま人化は解かれ、本来の姿をベアードは取り戻した。「何かはわからぬが、ここでの用は終わりだデュアル...

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最果て  1  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「ここまでくればもういい頃合だよな」北方の凍てつく大地を忽然と歩き出した男が、一人声を漏らす。連れもなく独り言を発するのは、大陸中央からはるばる流れてきた戦士だった。ベアードと名乗るこの放浪の戦士は傭兵暮らしが長いせいだろうか、とかく独り言が多かった。「先ずは宿だな、真界ではともかく末界でこの姿であっては宿で一息をつくのが自然の成り行きだろうからな」今もまた微かに光る足元の輝きを見つめ独り言を繰り...

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最果て  2  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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北の大地その寒々とした荒野の果てに、その宿はひっそりと建てられていた。大陸の北東のはずれ、葉脈のように縦横無尽に伸ばされた街道の先端、南西の国境の辺りだろうか訪れるものなどいるのかと思われるほどの寂れた地であった。「この先に宿は無し…か」その建物の入口に刻まれた文字をベアードがつぶやく。重い扉を開けると鈴がなり、気休めに置かれたかのような小ぶりの暖炉脇のカウンターの奥から無愛想な主人らしきものが現...

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最果て  3  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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先客がいた。おやっと思いながらベアードが見つめた先には、同じ思いなのだろうか珍しげにこちらを見た男が食事をしていた。「お先に頂いてるよ」そう声をかけてくれた男の斜向かいにベアードが腰を下ろす。先ほどの主人が同じように無愛想に注文を取りに来る。「なかなか忙しそうだな」食事と飲み物を頼んだあとベアードはこう付け足した。「この辺りは住む人もいないからな人手がたりないのさ」代わりに常連客らしき男が答えた。...

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最果て  4  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「で、南方はどんな状況なのだ?相変わらず身内通しの覇権争いが続いているのか?」空になったマグを同じように満たしてゲットが話を切り出した。「同じ種族どおしとは聞いてはいたが…俺は雇われの傭兵の身であったからそれぞれの内情についてはよく知らんが、俺が世話になっていた南方一の大国は常に周りの国の状況を気にしていたと思う。幾度となく繰り返される領域侵犯、他国の煽動による紛争の勃発、数年前は東の隣国と全面紛...

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王都会議  1  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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北方の二大大国の一つヴォルカノス インテラムの新都ラクスノン ドゥラートスでは、いつになく活気があふれていた。二年の歳月をかけ建てられた王宮のお披露目と、それに伴う各自治領の領主が国の隅々から集められ凍らぬ湖の熱気をいっそう高めているようだった。大陸各地からの諸外国の使者も招かれ、新都の数ある宿もその部屋と懐を膨らましている。即位して六年目のゲットランド国王も連日の訪問者との謁見で、少々辟易とした...

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王都会議  2  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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翌日、昨晩の宴の名残りが全て片付けられた王宮の大広間に、国王を始めとする国の重鎮たちが集まっていた。最後に現れたベアードが重々しく扉を閉じるよう命じたあと、おもむろに口を開く。「先ずは御足労感謝する、…人によっては多少気分を悪くされるかもしれないが、少しの辛抱を…では猊下、頼む」その言葉に、一人扉近くの離れた席のゲルシュタインが頷き司祭長に目配せをした。途端に皆の視界がぼやけ室内の空気が入れ替わる。...

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最果て  5  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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翌朝、ベアードが部屋で身支度を整えていると騒々しい声が聞こえて来た。「陛下!陛下!お迎えに参りましたぞー!」ベアードが部屋の扉を開けると、身なりの良い老人が大声を上げながら、誰かを探し回っている。「こっちだ!莫迦者!」ゲットの声だろうか、階下から同じく大声を張り上げている。それきり騒動は収まりあたりに朝の静けさが戻ったところで、再びベアードは身支度を続けることにした。暫くすると合図を告げるかのよう...

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最果て  6  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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半日ほど単調な北の最果ての風景が続いたあと、小高い丘の上に建てられた城砦のようなものが見えだした。延々と続く高い城壁、重々しいまでの堅牢そうな扉、砦と云うには立派すぎるその建物に馬車は向かってゆく。古き時代の遺物だからなどと、しきりと説明口調のゲットに一応頷きながらベアードは、その重厚で歴史ある建造物に驚嘆するばかりだった。馬車を下り引かれるように建物の中へ。下りぎわに御者を勤めていた先ほどの老人...

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最果て  7  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「元々の姿をこの世界でもとれるのか?うちのトールの話によると精霊はその輝きをたもつだけだそうだが」「真界での同じ姿形を、末界でとるならば、こんな感じだ」ベアードの巨躯が更に一回り膨れ上がる。先程まで身につけていた防具と同じの白く長い毛に覆われた姿、二本足で佇む精悍な獣に似た顔には、青い知性を宿した瞳が光っている。「この姿では、少しばかり言葉が聞き取りづらいかもしれんが」笑いを含んだ言葉を発し、しば...

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回顧 1 (ベアルドナルドラ物語外伝)

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確かに俺は精霊として変わり者だったかもしれない真界において末界での人の営みを眺めることが好きだった他の精霊や妖霊はそんな俺をいつも訝しげな目で見るばかりであったその日も俺は大陸西の砂漠に佇んで、移り変わる人の幻を眺めていた。砂漠の中央付近の小さな泉、それを人は幻たちはいつも争い奪い合っていた。確かに他に水らしきものはなく人にとって大事なものだとは分かっていたのだが。どうして気がつかないのだろうか、...

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回顧 2 (ベアルドナルドラ物語外伝)

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『何と言う輝きじゃ お前さんはどうやら精霊の王じゃな 申し訳ないが先ずはその力 少しばかり借りとするがな』その幻の考えがはっきりと俺に伝わってきた。そしてその幻は、俺の輝きを少しばかりすくいとり砂の上に何かを描き出した。みるみるうちに小さかった泉は水かさを増し、湖と言ってもおかしくない大きさにまで広がってゆく。『ここまであれば 争いもなくなるじゃろう』幻のつぶやきが伝わる。『何をしたのだ? お主と...

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王都会議  3  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「陛下からの言葉を改めて頂き、東方よりの脅威についての話を進めたい」改めてベアードが卓に座した面々をぐるりと眺め話を始めた。「今回の王都の遷都及び自治領制への移行、人口の増加に新規産業の開発発展は、このために進められてきた。この脅威に備えるためのものだ!」その言葉が皆に浸透してゆくのを見守るかのように、言葉を区切り区切りしゃべり続けるベアード。「元来我々は俺を含め平和を望む民でもあるが、それぞれに...

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神の子 1 (小説 ベアルドナルドラ物語)

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イースタンエンパイアの城下町、辺りを気にしながら歩く二人連れがいた。もっとも辺りを見回していたのはその内の一人だけだったのだが。「こんなとこ頃まで、何も俺たちが来なくてもいいだろう?ベアード」「商人ビードだ、シャル、それに初めは俺一人だった筈だ」「それは、お前一人をこんな所にこさせるわけにはいかないからな、副官の俺としては」身分を隠し商人にまでなりすました二人連れは、ベアードとシャンダルであった。...

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神の子 2 (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「バンズと申すのか…先ほどの術は一体…」ベアードが再度問いただす。「知らないの?魔導だよ、あいつらいつもうるさくてさ、退屈だから抜け出してきたんだ壁とゆう壁を壊しながらさ。それよりもここは真界でしょ?おじさんは妖魔か何かなの?そのやり方教えてくれないかな、父様はいつも忙しいばかりで、何も教えてくれないから。そうだ、おじさん、ボクに使えてよ、そしたら毎日が退屈しないから」「そうだバンズ、ここは真界だ。...

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回顧 3 (ベアルドナルドラ物語外伝)

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俺は思い浮かべる普段の姿を水面などに映りこむ俺自身の風貌を白く長い毛に覆われた全身、二本足で佇むところは丁度この老人や幻たちとあまり変わらない。こちらの世界で云うところの狼にも似た顔には青い瞳が輝いていたはずだった。俺自身の輝きの力が思い浮かべた姿を型どり始める。それを思い描く通りに何かが修正をしてゆく。輝くばかりの力の塊であったはずの俺は、老人を見下ろすほどの巨躯となり、気づけば熱く熱された砂を...

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王都会議  4  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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「では、わたくしめから。先ずは陛下からのご依頼である国家の収支について…」ゲルシュタインがこう切り出したところで、国王は何か言いたげな顔をした。「っん!うん!いきなり口を挟んで申し訳ないが、質疑の時間は後で設けるつもりであるので、何人も…何人も発言は控えるようお願いしたい!」すかさずベアードが釘を刺すように発言をした。「では、議長、報告を続けるが良いかね」ゲルシュタインが芝居がかった口調で問いただす...

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王都会議  5  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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初めての会議を終えた王宮の広間は先ほどと変わり、和やかなざわめきに満ちていた。その中で、この暫しの休息のあとの主な行事である軍事会議に向け数人と打ち合わせをしていたベアードのもとにひとりの男が話しかける。「ベアードどの、実はこの時間の間に広間の外へと出たいのだが」国務次官補佐のクラウドと云う男であった。「これはクラウドどの失礼した、で、如何なる用事で?」珍しく笑顔を作りベアードがさり気なく聞き返す...

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王都会議  6  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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皆が広間の中央に置かれた円形の卓の各々の席に落ち着くのを待ち、ベアードは高らかに宣言した。「これより今季初めの王都会議を此処に開くことに宣言する。我が国の故事に従ってこの序列のない丸い卓に等しく座することによって、応答形式討論形式のざっくばらんなものとして会議を進めたい。そこで俺よりひとつ提案がある、異議申し立てなければ挙手による発言、敬称抜きの早い廻しのものとしたい」これまでと違って立ち上がるこ...

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王都会議  7  (小説 ベアルドナルドラ物語)

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幾つも挙がった問いかけの手をベアードは予期していた如く、静かに見回しおもむろにこう述べた。「多くの方々の問いには、順番に答えよう。先ずは陛下から順に左の者から述べていただく」「俺からだな…」性急さを隠してやまない王が珍しく、思慮深く言葉を選びながらこう切り出した。その区切れた言葉に頭を下げることでベアードは先を促す。「旧知とゆう言葉の意味を…」「俺も聞いたこともなく…」「他の者も興味があることで…同じ...

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騎士の旅立ち (精霊騎士シャンダルの冒険)

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「では、あとをよろしく頼むぞ」そう言ってシャンダルは、生まれ育った館を後にした。後に残された僅かな使用人たちは、主人の幸運を祈りいつまでも頭を下げていた。元騎士であるシャンダルが、愛する妻と幼子を流行病でなくしたときと同様に酒浸りの生活に再び舞い戻ったのは、所属する精霊騎士団が召喚士ギルドの策略により解散させられてからであった。東方連邦評議会の主なる面々であった騎士団関係の者たちが疎ましく思われた...

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