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あの頃のボクは色々と足りなかったような気がする。

意味もなく求めてはただ彷徨うばかりだったと思う。

彼女との出会いもそんな足掻きの中で珍しく相手の方からのアプローチだった。

数多くに広げていた窓口の中から舞い込んだそれは、何時ものように疑わしくはあったがボクの興味をじゅうぶん引くものであった。

言ってはわるいが月並みな容姿の写メ、ボクに近い年齢、嘘じみた美貌と若さのその他と比べれば真実味があったからだ。

窓口での多少のやり取りを交わした後、ボクたちは互いのメアドと携番を交換するまでの間柄となっていた。

メールや携帯で挨拶や近況雑談を話す日々が続いた後、ふと遊び心で彼女の住む街まで足をのばしたボクはその日のうちに彼女と対面し彼女の家にまで上がりこむこととなった。



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その日彼女が仕事だと知っていたにもかかわらずボクは、夕方彼女が住む街の駅まで来ていた。

ボクは週一の日曜休みなのだが彼女は不定期。

幾度もかわしたメールや携帯での会話の中で何時かは実際に会おうと約束してはいたが、彼女の方の仕事の休みは既に決まっており暫くは望みは叶いそうになかったのだが。


駅を降り立ったボクは時間を確認し、時間をつぶしたあと彼女の終業に合わせて携帯をかけてる。

しかし携帯はつながらなく手が離せないか電車に乗っていると想像した。

彼女が帰宅に利用する電車の時間帯に辺りを付け、改札口をそっと外から見つめる。

何本目かの乗客の群れの中に見覚えのある顔を見つけた。

その女性の後をついてゆくと駅の傍のコンビニへと入ってゆく。

同じく後を追うように入ったボクは、少しばかりストーカーじみてるかもと自分でも思ったのだが。

どうやら彼女は何か食べる物を買ったようだった。

改めて顔を盗み見たボクは、確認のために店を出て携帯をかけてみた。

流石に声をかけて人違いだったら恥ずかしかった為もある。


でも携帯はつながらず、彼女らしき人影は夜の街並みにへと消えてしまっていた。



今夜は運も縁もないのだろうと駅に戻ろうとしたボクを、懐の携帯が呼び止めることとなった。

取り出した携帯は彼女の名を表示していた。

「もしもし和也君?どうかしたの?」

携帯から聞こえた声は、もうなじみ深い彼女の声。

「こんばんは、まりさん。ボクが何処にいるかわかる?」

「えっ?もしかして…」

「沼津の駅北だよ」

「…やっぱり。送ってもらった写メに似てる人がいるなあって思ってたの」

「そう、この間の電話で仕事の都合とか聞いて余計に会いたくなっちゃって…今から何処かで少しだけお茶するとか無理だよねえ」

ダメもとでボクは聞いてみる。

「今からだと…部屋に戻っちゃったし…和也君は時間とかは大丈夫?」

「今日は終電までなら大丈夫だけど」

「………なら、部屋に来ない?何もない部屋で和也君が良ければだけど」

思わぬ誘いにボクは直ぐにこたえを返す。

「じゃ喜んで、遠慮なく!」


そのあとは簡単に彼女のアパートまでの道のりを聞いてはやる気持ちで歩き出すだけだった。

電話で教わった通りに駅前の大通りを西に向かってゆくと、目印だと言われた病院の看板が見えてきた。

それを通り過ぎたところの角のアパートがそうだと聞いたのだったが、辺りは暗く人通りもなかったのだが人影を見かける。

「今晩は和也君」

それは先ほどの彼女の姿だった。

「今晩はまりこさん。改めて初めましてボクが和也です」

そんな挨拶を返したボクの手をつかんで彼女は笑顔でボクを案内してくれた。

角を曲がるとすぐに、階段があるアパートがあり彼女はそこにとボクを連れてゆく。

「何もないけどね」とそう言った彼女の部屋は家具も少なくて生活臭もあまり感じられない殺風景なものだった。



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